食いしばり(噛みしめ・歯ぎしり)
目まぐるしく変化する多様な環境でも私たちが生命を維持し、活動することができるのは、体内の向上性を自律的に維持する仕組みを備えているおかげです。
ですが、この恒常性維持システムのバランスのくずれが長期間に渡ると、じわりじわりと様々な疾患や不調が生じてしまうのも現実です。
食いしばりや歯ぎしりもその中のひとつ。
肩こり首こりがお悩みでご来院頂く方の多くが食いしばりの症状も併せてお持ちの事が多いです。
自覚してご来院頂く方もいらっしゃいますが、自覚していない方もいらっしゃいます。
肩こり首こりにより自律神経の影響から食いしばりをしてしまう、
またはストレスから無意識に食いしばってしまい肩こり首こり(それに伴う頭痛等の症状)がでてきてしまう・・・
どちらの場合もあるでしょう。
ですので、一番気になっている症状を治療していくのはもちろん、根本となる原因を見極め治療していく事が大切です。
食いしばりとは
食いしばり(クレンチング)は、噛みしめ(ブラキシズム)の一種で、噛みしめの中にはその他に歯ぎしり(グラインディング)があります。
また、噛みしめは起きている時(覚醒時)のみではなく、睡眠中にもおこります。
睡眠中に発生する噛みしめは「睡眠時ブラキシズム(Sleep bsuxusm:SB)と言い反復性の咀嚼筋活動を示す睡眠関連運動異常症であり、
自分でなかなかコントロールしにくいので注意が必要です。
睡眠中に食いしばりをしてしまうと、筋肉が凝ってしまうだけでなく、「交感神経活動は亢進」「副交感神経活動は抑制」され、せっかく体と心を休める時間である睡眠でありながらきちんと体が休まらず疲労が溜まってしまいます。
なぜ睡眠時に食いしばりをしてしまうのか。
結論から言うとストレスが最も多い原因であることが分かっています。
食いしばり発現の鍵は,微小覚醒という睡眠中の一過性の生理的変動のメカニズムにあります。
微小覚醒は,睡眠を保護し睡眠の進行を円滑にするために,体内の内因性刺激(低酸素,血圧上昇)や,外部環境の変化(音刺激など)に生体を順応させる生理学的意義があります。
ウィーン大学名誉教授であるR.Slavicek は、ストレスマネージメントとして夜間ブラキシズム(睡眠時中の食いしばり)という機能をあげています。
元々は身体を守るための反応がバランスを崩し過度な筋緊張に結びついてしまっているのですね。
食いしばりの主な原因
ストレス | 圧倒的大多数がこのタイプ。 |
習慣 | スポーツ選手などで、瞬発的に力を出すような職業に就いている人の場合、食いしばりが習慣化してしまっているケース。 |
噛み合わせ・骨格 | 咬み合わせの異常や顎の変位、金属製の詰め物があっていないなどが原因で、歯ぎしり・食いしばりが起きるケース。 |
子ども特有のもの | 永久歯と乳歯の入れ替え時期におこる不快感などが原因で、歯ぎしり・食いしばりが起きるケース。 |
この中で鍼灸治療で対応可能なものはストレスや習慣に起因するものとなります。
鍼灸でできること
①自律神経のバランスの調整
②口腔周囲筋(主に咬筋・側頭筋)の緊張緩和
③東洋医学的治療(症状のみならず体質に合わせ全体のバランスを調整)
どこに鍼灸をするのか
顔面部
筋肉が硬結している咬筋、側頭筋へ鍼をしていきます。
また自律神経の調整として三叉神経領域のツボへも刺激していきます。
肩・頚部
食いしばりをしていると胸鎖乳突筋を始めとする筋肉も緊張を硬くなってきてしまいます。
お首の鍼灸施術によりその周囲の循環や筋緊張を緩和していきます。
下肢(足)
脳の偏桃体という部分への持続的な侵害性刺激は、心拍の増加・血圧の上昇・偏桃体への持続的な侵害性刺激は、心拍の増加、血圧の上昇、呼吸の抑制とともに、恐れ、不安感などの不快情動を生じ、さらに視床下部へ強く入力されて不安を増長させるといわれています。
さらに偏桃体の興奮は、レム睡眠の抑制により促進され、レム睡眠の抑制は情緒不安定・焦燥感・不安感につながり、近年ではうつ状態を呈するという報告があります。
(文献:小林義典. 顎関節症と心理社会因子 Jpn J Psychosom Med 50:719 724.2010.)
また、ツボの部位によって、それぞれ脳の反応部分が異なるという研究報告があり、偏桃体へアプローチできるとされるツボに鍼やお灸で刺激をします。
体質(証)に合わせた手足やお背中のツボ
その他、東洋医学では患者様の全体を診て体質改善を行っていきます。
「食いしばり」という同じ症状が現れていても根本の原因は体質や状況によって異なる事があるので病気を診るのではなく人を診る事を心掛けカウンセリングをしっかりしていきます。
【歯ぎしり・食いしばりチェックリスト】
□歯ぎしりをしていると家族から言われたことがある
□仕事中など、集中しているときに気づくと噛みしめている
□歯にヒビが入っていたり、擦れて欠けたような歯がある
□冷たいものがしみる
□歯の根元が削れている・欠けている
□肩こりや頭痛などの症状を強く感じることがある
□頬の内側に噛んだあとや、舌に歯型(圧痕)がついている
□起床時に口の周囲がこわばる・あごが疲れている・だるい
どのくらい当てはまったでしょうか?
セルフケア
①起きている時間は歯と舌の位置に気を付け、力を抜くように意識する。
具体的には・・・
〇上の歯と下の歯を1〜2mm離す。
〇舌の位置は前歯に触れず、上顎の前歯の根本にある膨らみを触っている状態。
なかなか食いしばりの癖がついていると常に意識するのは難しいと思いますが、慣れるまでは目につく所にポストイット等にメモし定期的に意識しましょう。
少しづつコツコツ^^
②咬筋・側頭筋・胸鎖乳突筋等の関連する筋肉を優しくマッサージしたり緩めたり、自律神経を調整するツボを刺激する。
いくつかあるツボですが今回は3つのツボをご紹介
〇完骨(カンコツ)
耳の後ろの出っぱった骨(乳様突起)のすぐ下。
〇天窓(テンソウ)
胸鎖乳突筋の後ろ。のどぼとけの高さ。
〇肩井(ケンセイ)
首のつけ根と方の先の中間で、押すと痛気持ち良い所。
(ツボの詳細等が知りたい場合はお気軽に公式LINEよりメッセージください。通われている患者様はセルフケアも実際にお伝えさせていただきますのでお声かけください^^)
食いしばりは、首肩や頭の筋緊張やメンタル面との関連が深いです。
長年食いしばりの癖がついてしまうと様々な症状が出てしまいがちですし、そのぶん治療期間が長くかかる場合が多いですので、出来るだけ早い治療やケアを行っていきましょう。